マーク・ハントは無言で成し遂げた。彼は口にすることで価値が下がり、結果だけが認められるということを信条としている。-決して目論んでいることを口にするのではなく。
ハントは庶民階級出身のチャンピオンである。そして夢を追いつづけ自分を信じれば不可能なことはないと強く信じる男である。この信条は世界一を決める格闘アリーナK1の頂点を極めた彼の姿で明らかになった。
マーク・ハントはニュージーランドの南オークランドにある治安の悪い街で育った。彼は経済的に恵まれたとはいえないが、その分愛情にあふれた大家族、優しさと思いやりに包まれた環境のなかで育った。ハントは家族への感謝を込め、2001年K1グランプリで優勝すると真っ先に家族に家をプレゼントしたのであった。
トレーニング、そして試合が日毎にタフになっていった。振り返ると彼の歩んだ道はたいへんつらいものであった。しかしハントはそんな時こそ自分を信じ、決して落胆したり自分を哀れんではならないと考えていた。どんな困難が立ちはだかろうと、さらに厳しい状況を光栄と感じ乗り切ろうとする人がいる。つまり自分だけに課された試練を克服することを名誉と感じている。人生と与えられた境遇に誇りをもって向かい合う、これこそがハント哲学の土台となっている。
大事なトーナメントに臨むときの精神状態は勝ち負けを大きく左右する。そんな時ハントはいつも彼をサポートするチームへの信頼を確認する。チームには元キックボクシングチャンピオンでトレーナーのハペ・ガロノアと、フィジカルトレーナーのデイブ・ウレーゼもいる。彼のトレーニングプログラムは実に綿密なものであった。ハントは毎朝5時には起床しプールで泳ぎこむ。それから最低二時間は午前中のトレーニングに費やす。午後にはジムでさらに四時間のトレーニングを行った。
マーク・ハントは次のように言う。
「これは実にタフなプログラムだよ。でもいつもチームメンバーには感謝しているし、僕はK1で有名になるだけでなく世界に通用する最高のファイターになるという夢を叶える特権を与えられた。ラッキーだと思っているよ。」
「これを読んでいる若いファイターたちへのメッセージは、普通の人間がそうであるようにK1ファイターたちも二本の腕と二本の足しかもっていない。彼らは鍛え上げられたすばらしい格闘家ではあるが、僕が試合で証明したように決して無敵の神々ではない。倒すことも可能である。とにかく自分を信じることだ。」
「もう一つの揺るぎない僕の座右の銘は、できるだけ正直にまっすぐ生きることだ。思っていることを口にし、言ったことを実行するんだ。もし間違ったり言ったことを守れなかったら、その人のところへ行って伝えればいい。謝って次へ進むんだ。正直な心をもって自分と他人に接しよう。」
「人を非難しないように努めるのも大事だが、また自分自身もだ。自分と周りの人間には優しくしよう。無理をせず自分の長所と短所に満足しよう。そして正直にたくましく生きるんだ。」
「僕にとってのカリスマ的存在はブルース・リーとモハメッド・アリの二人だ。実は僕が生涯引用しようとしている大好きな言葉の一つもアリのものなんだ。」
チャンピオンはジムでつくられるのではのではない。チャンピオンは彼らの中に潜在するものから成る。欲望、夢、そして想像することである。彼らはどたん場のスタミナ、瞬発力、技術と意思を持ち合わせなければならない。しかし意思は技術を勝るほど強くなくてはならない。
—モハメッド・アリ
「愛、そして尊敬」-マーク・ハント



